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藤島康介の詩学|第5項・トゥデイ
評価:
玉川紗己子.平松晶子.小桜エツ子.松本梨香.島田 敏.政宗一成,大畑晃一,玉川紗己子,小桜エツ子,松本梨香,島田敏,政宗一成,平松晶子
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¥ 4,662
(2008-01-25)
(増補・再公開分)



《藤島康介の詩学・目次》


 承前。

 『逮捕しちゃうぞ』にピリオドを打ち、そのテクストを関係のネットワークとしてまとめあげ、象徴化する作業を、藤島康介はたいへん適切に成し遂げている。『逮捕しちゃうぞ』連載の締めくくりにおいて、藤島は、その倫理観の諸々の流れを象徴的モチーフに仮託してきっちりまとめあげることに成功した。そして、それこそが藤島世界の貨幣として、さらに広がりを見せる藤島作品の世界観の秩序の起源となった。

 その、藤島作品の象徴世界の要として示されることになる『逮捕しちゃうぞ』作品世界の最重要登場キャラクター。それがトゥデイである。このトゥデイに関するエピソードを、漫画『逮捕しちゃうぞ』の締めくくりのエピソードとして示すことにより、テクストは形式的に完結し、のちの藤島康介作品世界に骨格を与える象徴的な存在となる。

 その最終エピソードとは、FILE.78,FINAL「トゥデイ最後の挑戦(前・後編)」のことである。この直前のエピソード18)においては登場人物相互の人間関係が総決算されたかに見えたのだが、あとに続くこのエピソードにおいて、ついにトゥデイそのものがメインに据えられるに至るのだ。

 たとえば、FILE.78とFINALの両方とも、その扉絵はトゥデイをメインに据えた構図で描かれている。また、さらには、最後のページもそのほぼ中心にトゥデイが斜上からの俯瞰視点で全身が描かれていて、構図の中心を占めている。こうした点からも、このエピソードにおける、さらには『逮捕』全シリーズにおけるトゥデイの重要な位置付けを伺い知ることができる。そしてもちろん、この最終エピソードの主役が、まさにこのトゥデイなのだ。まさにトゥデイは、形式的にも実質的にも、漫画『逮捕しちゃうぞ』のピリオドに据えられているというわけだ。

 では、『逮捕しちゃうぞ』において、トゥデイとは何なのだろうか?

 もちろんトゥデイは、当時本田技研工業から発売されていた実在する軽自動車であり、じっさいにミニパトとして多く採用された実績もある。ちょうど、辻本夏実と小早川美幸の二人が、所轄の交通課勤務の女性警察官であるという点では他の多数の女性警察官と変わりがないように、トゥデイもこうしたミニパトのひとつであるということに変わりはない。その属性そのものはごく平凡なのだ。

 しかし、辻本・小早川の二人が乗るこのトゥデイは、搭乗者に似て、そのパフォーマンス19)においてなにもかもが過剰である。それは、交通取締を行う女性警察官の乗物として一切が規格外の性能を持っている。彼女らの乗るトゥデイは、二人(とりわけ小早川)の手によってあらゆるチューンが施されており、有り余る馬力、加速、トップスピードを備え、ニトロ20)まで搭載されているのだ。これは明らかに交通取締という任務に必要な範囲をはみ出した過剰な性能であり、その意味でこのトゥデイは完全にイレギュラーな存在である。

 属性の平凡さとパフォーマンスの過剰さ、こうした性質は貨幣というものの性質と合致する。貨幣というものは、そのものとしてはひとつの商品にすぎず、その意味では平凡な属性を持っているにすぎない。貨幣それ自体はなんら特別なものではないのだ。しかし貨幣は、そのパフォーマンスにおいて、完全に通常の商品の範囲を逸脱したものとして振る舞うことになる。つまり、貨幣はいつでも誰とでも交換でき、それゆえ取引の決済の手段として利用することができるわけで、その流通の仕方が普通ではないのだ。誰でもそれを受け取ってくれるという商品として過剰な性質を有するからこそ、貨幣は流通し、価値を持つ。そして、このパフォーマンスの過剰こそが、貨幣を価値のあるものとしているのだ。

 そして貨幣は、いっさいの商品の交換の仲立ちとして機能する。つまり、一切のものを商品として価値換算可能なものとし、それを市場の交換ネットワークに接続することによって、一切のものを相互につなぐ役割を果たすのである。21)

 トゥデイが『逮捕』のなかで果たす役割も、そういった性質のものだといえる。じじつそれは、異なった価値を持つもの同士をつなぐ役割を果たしてきた。トゥデイの過剰さは夏実・美幸の過剰さそのものであり、この二人の過剰さは、あまりにも個性的すぎる登場人物たちを魅了し、相互につなぐ役割を果たしてきたのだ。その意味では、トゥデイ=夏実・美幸はまさしく、『逮捕しちゃうぞ』世界観における「貨幣」だったわけだ。

 そのトゥデイが、最終エピソードでは大破してしまう。
 二人の情熱そのものだったトゥデイの大破。
 それは、二人が二人であることを失わしめるに十分なものであった。

美幸「あの車は私自身だった。オイルが吹き出た時、私の体の血が流れるようだった。車体のひしゃげる音は、わたしの骨を折る音に聞こえた。」
夏実「あれだけの事故で私たちが無傷で済んだのは、きっとトゥデイが守ってくれたからね。」
美幸「わたし、ずっと思ってた。あの車から降りるのは、警官をやめる時だって。」
頼子「美幸ぃ・・・。」
夏実「本当に二人で苦労して組み上げたものねえ。ふたりで部品かきあつめてさ。あーあ、私も気が抜けちゃったなあ。」


 完全に気が抜けてしまい、情熱を見失ってしまった二人の姿に、中嶋、頼子、葵はとまどい、心配する。何とかしたいと考えた3人は極秘会議を開くが、なかなかいいアイデアが出てこない。
 そのとき、頼子はあることを思いつく。

 2人の永遠のライバル(?)、ストライク男を呼んだのだ。けしかけられた正義の味方マニア・ストライク男は、いつものように、もとい、いつもよりもハデに正義の交通取り締まりを開始する。

 そのことを頼子から聞かされた二人は、「最後に一華咲かせるため」に、ついに重い腰を上げる。(ここまでが前編)

 ストライク男の脅威に晒された(?)夏実、美幸と、中嶋、頼子、葵は、パーツを書き集め、エンジンを移植し、協力してトゥデイを組み上げる。こうして、ツインエンジンの新生トゥデイが完成する。
 あとは、ストライク男を捕えるだけである。


「あ・・・中嶋君。式場の予約、お願いね。」
「これで最後だから。」


 こう言い残した美幸は、本当に辞める気なのかと叫ぶ中嶋を背に、夏実とともに追跡を開始する。

 しかし、神出鬼没のストライク男は、見かけによらずすばしこく、錦糸町に現れたかと思ったら、今度は北新宿にあらわれる始末。これでは永久に追いつけない。

 そのとき、ふと警察無線ではない無線が入る。
 何とそれは、中嶋大丸からだった。彼も協力していたのだ。大丸だけではない。他にも、かつて二人に助けられた元自殺志願の女子高生・沙織、瀬奈、捜査一課の徳野さんが二人に協力し、二人のストライク男追跡を後押しする。

 そして、多くの人に支えられた二人は情熱を取り戻し、トゥデイのツインエンジンを唸らせ、ついにストライク男を追い詰めるのだ。

 夏実と美幸、二人の姿そのものであったトゥデイが大破した時、二人は自分の居場所を見失ってしまった。二人らしい情熱も躍動感も失い、全く気が抜けてしまったのだ。そして、警官を辞めることさえも示唆するに至った。『逮捕しちゃうぞ』世界の危機である。

 そのとき、そこまで追いつめられた二人が「らしさ」を取り戻したのは、かつて二人がトゥデイとともに結びつけてきた多くの人々に、こんどは逆に支えられること、そのことによってであった。この出来事により、トゥデイ=夏実・美幸が作品内において「貨幣」として機能していたことを明らかにすることになったのだ。

 『逮捕しちゃうぞ』は、種々雑多な、個性豊かな登場人物に彩られてきた物語である。そしてそこには、かならず2人とトゥデイの姿があった。しかし、2人もトゥデイも、そのたくさんある登場キャラクターのうちのひとつ、one of themにすぎない。また、それらは整然とした秩序を持っていたわけでもない。それぞれがそれぞれの個性を各々勝手に発揮してきただけの話だ。ゆえに、この漫画は雑多な印象を与えるものであった。先に述べた「不定形性」とは、そのことをさした言葉である。

 では、『逮捕』はただ雑多なだけのテクストなのかというと、そうではない。整然とした秩序があるわけではないが、バラバラでもないのだ。雑多でありながら、ちゃんと共存しているのである。まるでカンディンスキーの『コンポジション』シリーズのなかの、諸々の色彩と線のように。それを可能にしていたのは何だったのか?その答えが、この最終エピソードである。

 このエピソードにおいて、トゥデイと2人は、トゥデイ=夏実・美幸というかたちとして、ネットワークの結節点として描かれている。トゥデイが失われた時、夏実・美幸もいちど失われた。しかし、トゥデイ=夏実・美幸が失われた時、それを介して互いに繋がっていた中嶋・葵・頼子、大丸・瀬奈、沙織、徳野さん、果てはストライク男までもが、いっせいにトゥデイ=夏実・美幸を「再生」させるために動き出した。そして、トゥデイの再生とともに、夏実・美幸も再生する。このことから、かえって、トゥデイ=夏実・美幸がそれまでいかにこれらのものを結びつけていたかが照射されるのだ。

 こうして、不定形なテクストは、トゥデイ=夏実・美幸を貨幣とすることによって、コンポジションとして秩序を持つことになった。トゥデイ=夏実・美幸を介して、雑多な要素が相互に結び付けられたのだ。こうして、トゥデイ=夏実・美幸の貨幣秩序という、清濁合わせ呑む秩序が見いだされたのである。

 この秩序こそ、藤島的秩序のモデルとして確立されたものであり、今日まで至る藤島康介の創作活動の出発点となっているのである。一人の漫画家の「自立」は、こうして達成された。その「自立」の地点がいかなる高みにあったのかについて、今日われわれは『ああっ女神さまっ』のコミックスを通じて伺い知ることができるだろう。


第6項「軽やかな夏実、不自由な美幸、そして……」につづく

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18) FILE.75「ふたりだけの秘密」、FILE.76「葵ちゃんパニック!」(←どうでもいいがどこかで聞いたようなタイトルだ!)、FILE.77「魔法のアイテム」の3話のこと。夏美・美幸のコンビ関係、頼子・葵・夏美・中嶋の友人関係といったことが、美幸・中嶋のカップルを中心にふんだんに描かれている。(中嶋と葵がふたりきりで話すという珍しいシーンもある。)この段階からすでに『逮捕』の世界観をまとめにかかっていると見ることもできよう。
19) 行為遂行的性質。行為遂行上の性質。
20) もちろん爆薬のニトログリセリンのこと。瞬間的に強力な加速力が得られるため、ゼロヨンなど、短距離のスピードを競うレースで使用されることがある。一度使うとエンジンは焼き付いて、たいていは使い物にならなくなるという代物。トゥデイの場合、美幸がいちいち整備しているのだろう。
21) 以上述べたような貨幣の性質について、今村仁司『貨幣とは何だろうか』(ちくま新書)参照。


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